読んだメモ

  • 「ゴシップ的日本語論」(丸谷才一)を読む。普段の「うんちくエッセイ」の方が面白く、こういう政治だの教育だの堅い問題を扱った評論(といっても砕けているしエッセイに近いのかも)は、正論でもあるのかもしれないけど自己正当のように思ってしまって、例えば、パソコンの説明書の意味が分からないのは日本語の未熟さのせいだだのと熱く非難したり――。ま、でも、面白かった。
  • 「句あれば楽あり」(小沢昭一)を読む。俳句についてのエッセイでもあるし「やなぎ句会」の楽しい雰囲気をつづった随筆として楽しめる。ふんわりとした味わいで楽しくて最高。この前、新聞の書評欄に今年読んだ本で印象に残った本三冊を、作家だの学者だのが選んでいるのだが、この本はオレの三冊の中の一冊に入るなあと、人に薦める自信はないけど、思う。

私はオシャベリですが、自分の心の深いところによどんでいる思い・・・・・・本心といってもいいでしょうか、それをひと前で口にすると、あとできっと寂しくなります。ムナシサを味わいます。
物いへば唇寒し秋の風
やはり芭蕉はズゴイことを言ってますな。でもまた、物をいわずに、腹の中にただ溜めておくのもツライものです。だから、ちょっとこぼす、におわせる。俳句にはもってこいでしょう。ただ、におわせる程度ですから、理解されにくかったり、誤解されたりもします。しかしそこが醍醐味で、わかってくれた人がいた時の喜びはひとしおですし、相手の意味のとりようで、その人をタメス・・・・・・といっちゃ失礼ですが(中略)。俳句は(中略)こころの遊び――開放であると思えるのですが・・・・・・。

オレが俳句を書き始めたのが、まさにそういう心境からだったので嬉しくてニンマリしてしまった。人にあれこれ喋りすぎると虚しくなって、それがイヤだから喋らないようになって、でも、喋りたいという――。
句あれば楽あり (朝日文庫)