観たメモ

  • 人間学入門」を観た。野坂昭如の「エロ事師たち」が原作で小沢昭一が「スブやん」役で主演、そして、監督は今村昌平。ストーリーは基本的に野坂のと同じで、でも、異なっている部分もあって、スブやんの妻(後家)が気が違ったり、妻にマザコンの息子がいたり、ラストではスブやんが川の浮き家でダッチワイフ作りにかまけ流されていることに気づかずダッチワイフと大海に放たれたり。人が生きるには性や死と切り離せないもので、汚らわしいんだけどエロ事師たちは他の仕事をしている人と同じく(もしくはそれ以上に)真面目でけなげだなあと思った。あと、野坂の小説は文体が魅力で、そこが表現できないのは仕方がないことだけど、死者を魚に投影させたり劇中劇というか映画中映画(この映画もスブやんのエロ映画の一つというオチ)は映画ならではの面白さだと思った。あと、小沢昭一が怪演で関西弁もなぜか違和感なくこなしていて「ワイセツやからなんやねん。わいかて、ただの人間や」とか。器用なのにドロドロしているし、この人が噺家だったらそれなりの名人になっていたんじゃないかなあと思う。で、坂本スミ子(スブやんの妻)がまた狂気じみた演技。こういう女優は珍しい。

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