読んだメモ

  • 「名人 シん生、そしてシん朝」(小林信彦)を読む。本の帯を見ただけで分かるが、「古今亭シん朝の死は、ぼくにとって、エルヴィスの急死に匹敵する」って、ものすごい主観的でこれに共感できる人なんているんだろうかというくらいのキャッチフレーズで、小林は書く対象を突き放す傾向があるが、この本には説明不足なシん朝に対する愛情を感じた。

シん朝は、〈ラクゴや芸については語らない〉というストイックな芸人だった。実は、シん生もそうであり、自分の芸については何も語っていない。ストイックというよりシャイな父子だったのだろう。

言われてみると、確かにそうだ。コ三治は<芸談を拒む>ことを真面目にしてしまうゆえ、<拒む>こと(主張したくないということ)が主張になっている(こういうのも好きだけど)。だが、シん朝は<拒む>ことすら拒むというか――。孤独。かっこいいネェ。
名人―志ん生、そして志ん朝 (朝日選書)