読んだメモ

  • 「生きているのはひまつぶし」(深沢七郎)を読んだ。なんかしらないけど、ラブミー農場から発掘されたインタビューの録音テープやら未収録エッセーやらが収録されているとかいう本。ワーッと一息に読んでしまった。あーあ、もったいない!

アブラムシはバカだから、一本の梅の木にいっぱいたかって、自分が死ぬことになる。渋谷などを歩いていると、前から人がぶつかるが、これはアブラムシと同じくらいバカげたことだね。東京は五十人くらいでよい。そうなれば、水はきれい。公害もない。新聞記者がぼくの東京五十人説に「――水道局だけでそれだけの人がいるが・・・・・・」といったことがあるが。これはバカげたことだ。水なんぞ、五十人しかいなければわき水でたりる。

きっと、ラブミー農場の梅の木にアブラムシがたかってまいっていたんだろうなあ。また、深沢は「夢屋」という今川焼き屋を開いていたのだが、そのときに自作した歌があって(ちなみに深沢はギター弾きだった時期がある)、その歌の歌詞っていうのが――、

夢屋エレジー

今川焼き 今川焼き 今川焼き
鉄板にこびりついて離れない
どーうせ ぐっちゃぐっちゃになったからには
十円でも十五円でも喰わそうよ
せがれと腕相撲すりゃあ負けてしまうし
せがれと風呂にはいりゃ
せがれのせがれの方が親父のせがれよりでっかいし
親父の貫禄は台無しだ〜♪

今川焼き 今川焼き 今川焼き
十月一日 十月一日 十月一日
毎年十月に店開き ミツバチやありんこと違うのは
冬は稼いで夏遊ぶ
せがれと腕相撲すりゃあ負けてしまうし
せがれと風呂にはいりゃ
せがれのせがれの方が親父のせがれよりでっかいし
親父の貫禄は台無しだ〜♪

今川焼き 今川焼き 今川焼き
いくら売れても儲からない
いくら儲からなくても負けないね
お目目につばを付けて泣きましょう
せがれと腕相撲すりゃあ負けてしまうし
せがれと風呂にはいりゃ
せがれのせがれの方が親父のせがれよりでっかいし
親父の貫禄は台無しだ〜♪

この夢屋の顛末は「深沢七郎ライブ」って本に書いてあって面白かったけど今日はパス。で、この本の最後にある白石かずこのあとがきが、深沢の魅力を改めてオレに教えてくれた。ジャズのアドリブみたいな支離滅裂な展開と、そんな中になんだかよくわからない事実を突くようなハッとする言葉があって。あー、あっという間に読んでしまったのは失敗だ。もったいないこと。だけど、でも、こうやって新しい深沢の活字に会えたことはアリガタイことだ。復刊の流れが生まれたら嬉しいナ。